生温い話ばかりです…
2008.05.21,Wed
※真田の誕生日だという前提でお読み下さい。
何がほしいと幸村は問い掛けた。笑みさえ含んだ優しい幸村の問い掛けに、しかし真田の眉が寄る。
何故だとその眉間の皺は言っていた。謂れのない好意に大抵の人間は警戒するものだ。真田の眉間はそれをよく表わしていた。しかしこの場合謂れはあった。真田の態度は幸村にとっては謂れのない反応だった。
言われた言葉の意味が分からないらしい。幸村はそう判断した。同じ日本人とは思えない反応に幸村はひとつ息を吐き、もう一度、今度はゆっくりと発音することにした。これで分からなければ、その名前の通りこの男は随分昔の生まれということになる。
「なにか、欲しい物があるんじゃないか? 真田」
「…なんのことだ、幸村」
決定だった。真田はどうやら昔々の生まれらしい。顔と体格こそ日本人以外ありえなかったが、いやだからこそか言葉は通じないのだ。どうせござるとか左様とかそう言う言葉遣いをしてやらなければ、真田は理解できないに違いない。幸村はあえて間違った時代劇的な知識で真田を罵った。胸中に留めておいたのは、一応今日という日付を慮ってのことだ。
幸村は空を仰いだ。ステンレスの窓枠に縁取られた五月の空は青く澄んでいる。大きく開かれた窓からは爽やかな風が吹き込み、幸村の髪を撫でていった。
全く忌々しいほどいい日和だった。
三度目の正直と腹を括り幸村は口を開いた。仏の顔も三度という諺もある。
「欲しい物があるだろう、真田」
「何を言っているのか分からんと言っているだろう」
しかし二度あることは三度あるだったらしい。ぶちりと耳元でなにかが千切れる音を聞いた気がした。
幸村自身、己の気の短さはよく知るところだった。立海テニス部のレギュラー陣の殆ども知る事実を、しかしここに一人だけ知らない者がいた。
真田だった。
苛立ちを隠さず幸村が彼を睨みつけると、何が気に入らないのかとあえて問い掛けてくる馬鹿な男だった。そういうことをわざわざ口に出して問い掛けてくるのが真田の長所でもあり愚かなところでもある。
「分からないのか、真田」
「…すまん」
「謝ってもらう必要はない」
言外にお前の所為だと篭めれば、殊更真田が萎縮するのが分かった。そんな言葉にしていない部分は理解するというのに、どうして問い掛けの意味を真田は気付かないのか。
苛々と落ち着かない気分のまま幸村は爪を噛んだ。時折出る悪い手癖だった。気付いて幸村が拇指から口を離すのと、真田が口を開くのは同時だった。
「形が悪くなるからよせ、幸村」
――どうしてお前は。
「真田、俺の爪の形が汚いと、なにかお前の不利益となるようなことがあるか?」
「いや…そういう意味ではないが……」
「ないが?」
目をそらし下を向いた真田を、覗き込むように幸村は上半身を傾けた。
幸村の視線から逃れるように更に俯き、真田はぼそぼそと叱られた子どもがくちごたえをするような口調でなにか言っていた。
「真田?」
聞こえないとわざわざ言ってやる必要はなかった。語尾を上げて名前を呼べば、真田はもう少し大きな声で同じ言葉を口にした。
「…折角きれいな爪をしているのだ、汚くするのは勿体なかろう」
「へえ、真田は俺の指が好きなのか?」
「う…きれいだとは思ってい……」
「じゃあ嫌いなのか?」
真田はこの類の問答に弱い。不在の証明を最も得意とするのは仁王だが、幸村だって相応に長じていた。そうでなくとも真田を混乱させることなど容易い話だ。
「いや、そんなことはない! そんなことはなないぞ、幸村!」
「嬉しいな。でも意外だな。真田が俺の指・だけ・が好きだなんて…お前とフェティシズムなんてものは、なかなか興味深い組み合わせだな」
「な!」
目を白黒させ、真田は言葉を探しているようだった。フェティシズムなどという言葉が真田の辞書にあるとは考えにくい。男子中学生らしい嗅覚で性的な意味くらいは嗅ぎ取っているかも知れないが、それだとておぼろげな意味が分かっているかどうかだろう。
真田にとっての問題は、それより前に幸村が口にした言葉に違いなかった。指だけ、と限定した言い回しに、幸村は少しの落胆を混ぜておいた。言葉自体を理解する頭はないくせに、言外の意味を真田は聡い。
大きく首を振り、真田は半ば叫ぶような声で言った。
「そんなことはない! そんなことはないぞ幸村!!」
「じゃあ真田は、俺のどこが嫌いなんだ?」
「お、俺が幸村を嫌う筈がなかろう!」
「そうか。じゃあどこが好きなんだ?」
「全部だ!」
この病院は長期入院患者が多く、各部屋はプライバシーの関係もあって完全防音が売りだった。そうでなければ左右の部屋か、さもなければ廊下から誰かが飛んでくるだろう。
真田の告白は、それほどの大音量で口にされたものだった。
肩で息をつく真田はまだ自分の行動を振り返る余裕もないらしい。にっこりと幸村が笑う顔の理由も気付くまい。
「よく言った。えらいぞ真田」
滅多にない誉め言葉に真田の顔が年相応に綻ぶ。赤く染まった頬ほ隠そうとするように、いつも被っている帽子を引き下げようとする手を幸村は取った。
「ほら望み通りだ」
掴んだその手をシーツの中へ引きずり込むと、赤い頬はそのままに真田は途端泣きそうな顔に変わったが。
続きは近々!そろそろ6月の原稿はじめないとまずいので、下手すると入稿後…いやいや早めにあげますので!
いい加減いいや(自主規制するのも飽きました…)ってことでエロです。真田お誕生日おめでとう!お兄ちゃんだからきじょういとかそんな感じのオヤジギャグで祝います。ちがうもん幸村さんはオヤジギャグなんか言わないもん…!
何がほしいと幸村は問い掛けた。笑みさえ含んだ優しい幸村の問い掛けに、しかし真田の眉が寄る。
何故だとその眉間の皺は言っていた。謂れのない好意に大抵の人間は警戒するものだ。真田の眉間はそれをよく表わしていた。しかしこの場合謂れはあった。真田の態度は幸村にとっては謂れのない反応だった。
言われた言葉の意味が分からないらしい。幸村はそう判断した。同じ日本人とは思えない反応に幸村はひとつ息を吐き、もう一度、今度はゆっくりと発音することにした。これで分からなければ、その名前の通りこの男は随分昔の生まれということになる。
「なにか、欲しい物があるんじゃないか? 真田」
「…なんのことだ、幸村」
決定だった。真田はどうやら昔々の生まれらしい。顔と体格こそ日本人以外ありえなかったが、いやだからこそか言葉は通じないのだ。どうせござるとか左様とかそう言う言葉遣いをしてやらなければ、真田は理解できないに違いない。幸村はあえて間違った時代劇的な知識で真田を罵った。胸中に留めておいたのは、一応今日という日付を慮ってのことだ。
幸村は空を仰いだ。ステンレスの窓枠に縁取られた五月の空は青く澄んでいる。大きく開かれた窓からは爽やかな風が吹き込み、幸村の髪を撫でていった。
全く忌々しいほどいい日和だった。
三度目の正直と腹を括り幸村は口を開いた。仏の顔も三度という諺もある。
「欲しい物があるだろう、真田」
「何を言っているのか分からんと言っているだろう」
しかし二度あることは三度あるだったらしい。ぶちりと耳元でなにかが千切れる音を聞いた気がした。
幸村自身、己の気の短さはよく知るところだった。立海テニス部のレギュラー陣の殆ども知る事実を、しかしここに一人だけ知らない者がいた。
真田だった。
苛立ちを隠さず幸村が彼を睨みつけると、何が気に入らないのかとあえて問い掛けてくる馬鹿な男だった。そういうことをわざわざ口に出して問い掛けてくるのが真田の長所でもあり愚かなところでもある。
「分からないのか、真田」
「…すまん」
「謝ってもらう必要はない」
言外にお前の所為だと篭めれば、殊更真田が萎縮するのが分かった。そんな言葉にしていない部分は理解するというのに、どうして問い掛けの意味を真田は気付かないのか。
苛々と落ち着かない気分のまま幸村は爪を噛んだ。時折出る悪い手癖だった。気付いて幸村が拇指から口を離すのと、真田が口を開くのは同時だった。
「形が悪くなるからよせ、幸村」
――どうしてお前は。
「真田、俺の爪の形が汚いと、なにかお前の不利益となるようなことがあるか?」
「いや…そういう意味ではないが……」
「ないが?」
目をそらし下を向いた真田を、覗き込むように幸村は上半身を傾けた。
幸村の視線から逃れるように更に俯き、真田はぼそぼそと叱られた子どもがくちごたえをするような口調でなにか言っていた。
「真田?」
聞こえないとわざわざ言ってやる必要はなかった。語尾を上げて名前を呼べば、真田はもう少し大きな声で同じ言葉を口にした。
「…折角きれいな爪をしているのだ、汚くするのは勿体なかろう」
「へえ、真田は俺の指が好きなのか?」
「う…きれいだとは思ってい……」
「じゃあ嫌いなのか?」
真田はこの類の問答に弱い。不在の証明を最も得意とするのは仁王だが、幸村だって相応に長じていた。そうでなくとも真田を混乱させることなど容易い話だ。
「いや、そんなことはない! そんなことはなないぞ、幸村!」
「嬉しいな。でも意外だな。真田が俺の指・だけ・が好きだなんて…お前とフェティシズムなんてものは、なかなか興味深い組み合わせだな」
「な!」
目を白黒させ、真田は言葉を探しているようだった。フェティシズムなどという言葉が真田の辞書にあるとは考えにくい。男子中学生らしい嗅覚で性的な意味くらいは嗅ぎ取っているかも知れないが、それだとておぼろげな意味が分かっているかどうかだろう。
真田にとっての問題は、それより前に幸村が口にした言葉に違いなかった。指だけ、と限定した言い回しに、幸村は少しの落胆を混ぜておいた。言葉自体を理解する頭はないくせに、言外の意味を真田は聡い。
大きく首を振り、真田は半ば叫ぶような声で言った。
「そんなことはない! そんなことはないぞ幸村!!」
「じゃあ真田は、俺のどこが嫌いなんだ?」
「お、俺が幸村を嫌う筈がなかろう!」
「そうか。じゃあどこが好きなんだ?」
「全部だ!」
この病院は長期入院患者が多く、各部屋はプライバシーの関係もあって完全防音が売りだった。そうでなければ左右の部屋か、さもなければ廊下から誰かが飛んでくるだろう。
真田の告白は、それほどの大音量で口にされたものだった。
肩で息をつく真田はまだ自分の行動を振り返る余裕もないらしい。にっこりと幸村が笑う顔の理由も気付くまい。
「よく言った。えらいぞ真田」
滅多にない誉め言葉に真田の顔が年相応に綻ぶ。赤く染まった頬ほ隠そうとするように、いつも被っている帽子を引き下げようとする手を幸村は取った。
「ほら望み通りだ」
掴んだその手をシーツの中へ引きずり込むと、赤い頬はそのままに真田は途端泣きそうな顔に変わったが。
続きは近々!そろそろ6月の原稿はじめないとまずいので、下手すると入稿後…いやいや早めにあげますので!
いい加減いいや(自主規制するのも飽きました…)ってことでエロです。真田お誕生日おめでとう!お兄ちゃんだからきじょういとかそんな感じのオヤジギャグで祝います。ちがうもん幸村さんはオヤジギャグなんか言わないもん…!
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Contents
novels(幸真main
いただきます(0305up
information(0420up
日記もどき
└テニミュレポ①(1011up
レポ
2nd立海(0916
幸村イブ(6/15-16,29)
2nd
└不動峰戦(東京公演)1-不動峰戦(東京公演)2-不動峰戦(凱旋公演)
└ルド山戦(まとめて)
中の人について
いただきます(0305up
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日記もどき
└テニミュレポ①(1011up
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2nd立海(0916
幸村イブ(6/15-16,29)
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