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生温い話ばかりです…
2024.11.24,Sun
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2013.06.15,Sat
7

 両足の足首同士をひっかけるようにして絡め、幸村の腰を抱き寄せた。
「っく、ひ、い!」
 押し上げられ中から突き上げられる形になって、その強い感覚に喉が鳴る。そこを幸村が更に突き上げてきた。
 深く拡げられる感覚に俺は喘がされる。幸村の背中にまわした手で、どうにか崩れ落ちそうな体を支えた。
 上半身を支える幸村の両腕に、二人分の体重がかかっていた。テニスの為に摂取したカロリーははもうほとんど残っていなかった。その残りを絞り出すように性交に没頭する。
 幸村が動きかき混ぜ拡げ、俺はきつく狭め飲み込みしがみついていた。何度か中で吐き出された熱が、幸村が動くたび奥から溢れ出てくる。
 腰の下に気持ちの悪い水たまりができていた。
 腰が揺れる度にいやらしい水音が立つ。
「ひ、は、ゆき、ゆきむら…!」
 俺はどうにか上がる声で幸村の名前を呼んでいた。返る声はない。そもそも行為がはじまってから、幸村が喋ることはなかった。
 低くうめくくらいがせいぜいで、俺のようにはしたなくよがる声を上げたりもしない。幸村にとってこの行為は、テニスで昇華されなかった熱を解消するためなのだろう。機会があれば誰とでもするものに違いない。
 俺が幸村に勝てれば、こんな形で幸村が俺を抱く必要もなかった。それを思うと俺は悔しく腹立たしかった。俺が勝てば幸村を抱けるのかとも思う。それを望んだことはなく、その想像も長続きはしなかった。
 空に近くなった性器を幸村がいじり、薄い精液を溢れさせる。もうほとんど俺の中に熱は残っていなかった。
 痛みに近い快感に俺はひいと短く鳴いた。
「さなだ」
 滅多に声を上げない幸村が俺の耳元で囁く。それは俺が幸村の背に腕をまわし抱きついているからで、肩に乗った幸村の顔は見えなかった。
 ただひどく甘い声で幸村が俺の名前を呼んだ気がした。なにかと比べようもなくただ甘いと思ったのだ。
 腰が抱かれぐぐと深く幸村が入り込んでくる。幸村の腰に絡めた脚で、俺は幸村を抱き寄せ更に深い場所まで幸村を飲み込んだ。
 肉をかき分ける幸村の先端が、俺のいい場所をなぞり突き上げ、しがみついた指の先にまで震えを走らせる。
「さなだ…っ」
 耳元でもう一度幸村が声を上げ、そうして俺の中でひときわ大きさを増したそれから熱が吐き出された。
 熱い。熱くてたまらなかった。
「ゆ、き…っ!」
 その熱に引きずられて俺も達していた。薄い精液はほとんど水のようで、幸村と繋がった場所までだらだらと流れ落ちていく頃にはもうう冷えてしまう。
 中にある幸村はまだ熱かった。



 今度目を覚ますと、幸村も横になっていた。なんだか中途半端に服を着ていて、下着も着けていない。
 なんて格好だとひとりごちると、ぱちりと幸村が瞼を開けた。
「お前が言うな」
「起きていたのか」
「寝ていたよ。お前の声で起きたんだよ」
 俺は大して大きな声を出したわけではなかった。その声で起きたことより、幸村の寝起きの良さに俺は驚いた。
 適当に髪をかきあげはねた箇所を撫でて身繕いをしながら、幸村は大きな欠伸をひとつする。それきり今まで眠っていた気配などなくなってしまった。
 落ちてきた前髪の間から深い色の瞳が俺を見た。
「真田」
 その声には俺を抱いていたときに聞いた甘い響きはもうなかった。それでいいのだと思う。
「お前だってずいぶんな格好じゃないか」
 そう指摘されて、ほとんど下着一枚のような自分の姿に俺はやっと気が付いた。
 体を離したあと今と似たような姿で幸村は後片づけをしていた。ホースを蛇口につなぎ、適当に水をかけてまわっていただけだが。
 俺と幸村の吐き出したものはすぐに流されにおいも残らなかった。冷えたコートが気持ちよくて、俺は途中から眠ってしまったのだろう。幸村も同じような顛末に違いない。
 お互いを責められる話でもなかった。俺は黙って口をつぐむ。
 もう一度シャワーを浴び直し身支度を整え、俺たちはコートを後にした。
 空腹でたまらないという幸村に、俺の家に来るかと尋ねた。誕生日だから、母は多分幸村の分の食事も作ってくれているだろう。
「じゃあ誕生日ケーキ、買って行こうか」
 幸村がこう答えるところまでも、毎年のことだった。幼い頃から幸村の家にも俺の家にも俺達はよく出入りしている。誕生日もそうだ。幸村がプロになってからもそれは変わらない。
 日が傾き長く影の伸びる幸村が、数歩歩いてから俺を振り返った。
「真田、誕生日おめでとう」
 その顔は陰になってしまっていて見えない。声は優しかった。俺はありがとうとだけ返した。
 来年もきっと同じだろう。

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