生温い話ばかりです…
2012.03.05,Mon
3
夕食は二人きりで食べた。部屋に食事を運んでもらい、一日早いけれどケーキも出した。
日が暮れるまで打ち合い、汗と泥で汚れた体を綺麗にしてからテーブルに着いて、二人きりで食事をしたのはもしかしたらはじめてだったかも知れない。
お互いの家に泊まることは、幼い頃からの付き合いで何度もあったし中学からは学校でも部活でも一緒だ。逆に言うと二人きりで行動することは最近ひどく減っていた。夕食となると尚更だ。
すこし前までは部活の引き継ぎの為に、柳や赤也を含めて遅くまで学校に残っていることも多かった。真田と二人きりでこんなに長い時間を過ごしたのがそもそも久し振りだ。そんな話をしながら、食事をした。
「そうだな」
どこか噛みしめるような、味わうような口調で真田は頷いた。
「そうだね」
幸村は小さく笑いそう応えた。
ケーキまで食べ終える頃には、疲労の浮かんだ真田の顔はひどく眠たそうだった。食べ終えた食器を片付け、ついでにお茶を入れてくると言って幸村は立ち上がった。手伝うと真田も言ったが、幸村はそれを断り休んでいればいいと言葉を投げた、
シャワーを浴びたとき寝間着には着替えていたから、ベッドに入って待っていてもいいとも付け加えた。
「分かった、すまん」
「いいよ。自分の家だと思って、ゆっくりしていて」
真田がその言葉をどう取ったのか分からなかったが、戻ってきたときまさか本当にベッドに横たわっているとは思わなかった。
すこしの期待もしなかったいえば嘘だが、本当にベッドに入って待っているとは思わないだろう。あの真田が。
「さなだ?」
滅多に淹れない緑茶を、真田のために準備し載せてきたトレイは、ベッド脇のカウンターへ置いた。真田用にと買ってきたそばがらの枕に頭を預けて、横を向いて体を丸めて真田は横になっている。カウンターとは逆を向いている顔は、幸村が呼びかけても振り返らなかった。
前言を翻し、真田だからありそうな話だと幸村は思い直した。この状況で眠っていいと、誰が言ったのだろうか。カウンターのある側からベッドへ膝を載せ、真田の体へ覆い被さるようにしてからその顔を覗き込んだ。
「寝ているの?」
「…ぅわっ」
近すぎる幸村に真田が身を仰け反らせるようにして逃げ出そうとするが、背中に幸村の膝があたりそれ以上動くことができない。顎を持ち上げ首を伸ばしすこしでも距離を取ろうとしているのがかわいい。
いつもそう見えない首から上とが繋がったラインがきれいに浮き上がって、誘っているようだと言ったら真田はどうするのだろう。
「起きてるなら返事したらどうだい?」
「も…もうほとんど寝ていたのだ…」
「ほとんどだろう、じゃあ起きてるじゃないか」
「う…」
言い淀み唇を噛んだ真田を覗き込んだまま、幸村はすこしだけ手の位置を変えた。体を支えるためだったけれど、ぎしりと耳元で上がった音に、可哀相なくらい大きく真田が肩を震わせた。
期待が戻ってきて、幸村は口元をほころばせた。
真田はいつも幸村の期待以上のものを返してくれる男だった。
最初は彼だけだった。負けてもなお幸村とテニスがしたいと言ったのは真田が最初だ。幸村のテニスに踏み躙られても、幸村に怯えず臆せず幸村の前に立ち続けたのも真田がはじめてだった。その他のことでも、幸村にとっては真田がいちばんなのだ。
欲しいものはたいして多くない。今だって真田が手に入ればそれでよかった。そうでなければこんな下らない思いつきに、家族や真田の家の人たちまで巻き込んだりはしない。
全部真田のためだった。
「好きだよ、真田」
「お、俺達は…」
「男同士だからなんだっていうのさ。そんなの、お前がいちばんよく分かってるだろ」
「いや、俺は」
「全部分かってて、こんな馬鹿な話に乗ったんだろう?」
重ねた問い掛けに真田は答えなかった。答える必要はない。
幸村が口付けても真田は逃げなかった。顎を掴んで口を開かせて、ほとんど噛みつき飲み込むようにして口付けを深くした。
新しく買ってきたばかりのそばがらの枕の上で真田がすこし動く度、がさがさと音が立つのだけが聞こえた。
余裕のない口付けは終わったあと幸村でさえ酸欠でくらくらした。幸村の下で、与えられる側だった真田は大きく何度も息をしている。喘ぐ喉がいやらしい。
「さなだぁ…」
荒く濡れた息を一つ吐いて、幸村は真田の喉に噛みついた。舌で喉仏を転がすようにしゃぶると、喉の中を通る真田の呼吸が伝わってきて面白い。
離れる頃には唾液でべたべたに濡れた首のちょうど中央には、見間違えようのない歯形が残っていた。吸い付いた赤い跡がその周囲にいくつも見える。
「さなだ」
幸村の笑う顔は、真田には見えなかったのだろう。見えていたらいくらか身構えるかしたはずだ。すくなからず抵抗もしたかも知れないし、幸村を止めようとした可能性もある。どれもしなかったら、その次のことが真田の身には起こってしまった。
「さなだ…っ」
「っ、いつ…!」
寝間着のズボンの上から真田の急所を幸村は掴んだ。手加減もなく指を絡めると痛みに真田がうめく。眉を寄せ痛みに青ざめる真田は可愛かったけれど、はじめて見るものでもなければ見たかったものでもない。
一度手を離し、それからゆっくりと指を沿わせると真田が細く息を吐いた。
「きもちいい、真田?」
「は…あぁ」
「じゃあそう言って」
「な…っあ!」
「ちゃんと俺に聞こえる声で言うんだよ」
そう言いながら、幸村はゆっくりと体を起こした。真田の上に追い被さっている体勢だと無理がかかるし片手しか使えない。
しかしそれ以上にただの嫌がらせだと真田はすぐに察しただろう。真田もそこまで馬鹿ではない。
手が届かないところまで幸村が遠離ってしまう前に真田の腕が伸びてきて、その背中を掴んで強く引き寄せた。
「ゆき…むら…っ」
耳元で真田の濡れたような声が幸村の名前を呼んで、ほとんど消え入りそうな大きさで気持ちがいいと囁いた。これほど近くなければ聞こえない声だ。
ぎゅっと手の中の真田自身を痛まぬ程度にきつく握り締めると、耳元で真田が息を吐いた。熱い息でかすかに言う言葉だけで、それだけで満足する幸村ではなかった。それもきっと真田は知っている。
背中に回った真田の手が、しがみつく力を強くした。
夕食は二人きりで食べた。部屋に食事を運んでもらい、一日早いけれどケーキも出した。
日が暮れるまで打ち合い、汗と泥で汚れた体を綺麗にしてからテーブルに着いて、二人きりで食事をしたのはもしかしたらはじめてだったかも知れない。
お互いの家に泊まることは、幼い頃からの付き合いで何度もあったし中学からは学校でも部活でも一緒だ。逆に言うと二人きりで行動することは最近ひどく減っていた。夕食となると尚更だ。
すこし前までは部活の引き継ぎの為に、柳や赤也を含めて遅くまで学校に残っていることも多かった。真田と二人きりでこんなに長い時間を過ごしたのがそもそも久し振りだ。そんな話をしながら、食事をした。
「そうだな」
どこか噛みしめるような、味わうような口調で真田は頷いた。
「そうだね」
幸村は小さく笑いそう応えた。
ケーキまで食べ終える頃には、疲労の浮かんだ真田の顔はひどく眠たそうだった。食べ終えた食器を片付け、ついでにお茶を入れてくると言って幸村は立ち上がった。手伝うと真田も言ったが、幸村はそれを断り休んでいればいいと言葉を投げた、
シャワーを浴びたとき寝間着には着替えていたから、ベッドに入って待っていてもいいとも付け加えた。
「分かった、すまん」
「いいよ。自分の家だと思って、ゆっくりしていて」
真田がその言葉をどう取ったのか分からなかったが、戻ってきたときまさか本当にベッドに横たわっているとは思わなかった。
すこしの期待もしなかったいえば嘘だが、本当にベッドに入って待っているとは思わないだろう。あの真田が。
「さなだ?」
滅多に淹れない緑茶を、真田のために準備し載せてきたトレイは、ベッド脇のカウンターへ置いた。真田用にと買ってきたそばがらの枕に頭を預けて、横を向いて体を丸めて真田は横になっている。カウンターとは逆を向いている顔は、幸村が呼びかけても振り返らなかった。
前言を翻し、真田だからありそうな話だと幸村は思い直した。この状況で眠っていいと、誰が言ったのだろうか。カウンターのある側からベッドへ膝を載せ、真田の体へ覆い被さるようにしてからその顔を覗き込んだ。
「寝ているの?」
「…ぅわっ」
近すぎる幸村に真田が身を仰け反らせるようにして逃げ出そうとするが、背中に幸村の膝があたりそれ以上動くことができない。顎を持ち上げ首を伸ばしすこしでも距離を取ろうとしているのがかわいい。
いつもそう見えない首から上とが繋がったラインがきれいに浮き上がって、誘っているようだと言ったら真田はどうするのだろう。
「起きてるなら返事したらどうだい?」
「も…もうほとんど寝ていたのだ…」
「ほとんどだろう、じゃあ起きてるじゃないか」
「う…」
言い淀み唇を噛んだ真田を覗き込んだまま、幸村はすこしだけ手の位置を変えた。体を支えるためだったけれど、ぎしりと耳元で上がった音に、可哀相なくらい大きく真田が肩を震わせた。
期待が戻ってきて、幸村は口元をほころばせた。
真田はいつも幸村の期待以上のものを返してくれる男だった。
最初は彼だけだった。負けてもなお幸村とテニスがしたいと言ったのは真田が最初だ。幸村のテニスに踏み躙られても、幸村に怯えず臆せず幸村の前に立ち続けたのも真田がはじめてだった。その他のことでも、幸村にとっては真田がいちばんなのだ。
欲しいものはたいして多くない。今だって真田が手に入ればそれでよかった。そうでなければこんな下らない思いつきに、家族や真田の家の人たちまで巻き込んだりはしない。
全部真田のためだった。
「好きだよ、真田」
「お、俺達は…」
「男同士だからなんだっていうのさ。そんなの、お前がいちばんよく分かってるだろ」
「いや、俺は」
「全部分かってて、こんな馬鹿な話に乗ったんだろう?」
重ねた問い掛けに真田は答えなかった。答える必要はない。
幸村が口付けても真田は逃げなかった。顎を掴んで口を開かせて、ほとんど噛みつき飲み込むようにして口付けを深くした。
新しく買ってきたばかりのそばがらの枕の上で真田がすこし動く度、がさがさと音が立つのだけが聞こえた。
余裕のない口付けは終わったあと幸村でさえ酸欠でくらくらした。幸村の下で、与えられる側だった真田は大きく何度も息をしている。喘ぐ喉がいやらしい。
「さなだぁ…」
荒く濡れた息を一つ吐いて、幸村は真田の喉に噛みついた。舌で喉仏を転がすようにしゃぶると、喉の中を通る真田の呼吸が伝わってきて面白い。
離れる頃には唾液でべたべたに濡れた首のちょうど中央には、見間違えようのない歯形が残っていた。吸い付いた赤い跡がその周囲にいくつも見える。
「さなだ」
幸村の笑う顔は、真田には見えなかったのだろう。見えていたらいくらか身構えるかしたはずだ。すくなからず抵抗もしたかも知れないし、幸村を止めようとした可能性もある。どれもしなかったら、その次のことが真田の身には起こってしまった。
「さなだ…っ」
「っ、いつ…!」
寝間着のズボンの上から真田の急所を幸村は掴んだ。手加減もなく指を絡めると痛みに真田がうめく。眉を寄せ痛みに青ざめる真田は可愛かったけれど、はじめて見るものでもなければ見たかったものでもない。
一度手を離し、それからゆっくりと指を沿わせると真田が細く息を吐いた。
「きもちいい、真田?」
「は…あぁ」
「じゃあそう言って」
「な…っあ!」
「ちゃんと俺に聞こえる声で言うんだよ」
そう言いながら、幸村はゆっくりと体を起こした。真田の上に追い被さっている体勢だと無理がかかるし片手しか使えない。
しかしそれ以上にただの嫌がらせだと真田はすぐに察しただろう。真田もそこまで馬鹿ではない。
手が届かないところまで幸村が遠離ってしまう前に真田の腕が伸びてきて、その背中を掴んで強く引き寄せた。
「ゆき…むら…っ」
耳元で真田の濡れたような声が幸村の名前を呼んで、ほとんど消え入りそうな大きさで気持ちがいいと囁いた。これほど近くなければ聞こえない声だ。
ぎゅっと手の中の真田自身を痛まぬ程度にきつく握り締めると、耳元で真田が息を吐いた。熱い息でかすかに言う言葉だけで、それだけで満足する幸村ではなかった。それもきっと真田は知っている。
背中に回った真田の手が、しがみつく力を強くした。
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novels(幸真main
いただきます(0305up
information(0420up
日記もどき
└テニミュレポ①(1011up
レポ
2nd立海(0916
幸村イブ(6/15-16,29)
2nd
└不動峰戦(東京公演)1-不動峰戦(東京公演)2-不動峰戦(凱旋公演)
└ルド山戦(まとめて)
中の人について
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