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生温い話ばかりです…
2024.05.06,Mon
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2010.01.02,Sat


「振られちゃったよ」
 さらりと、特に傷付いた様子もなく幸村はそう言った。表情を変えたのは真田の方だ。
 突然深夜にひとを訪ねて来るなり、なにを言い出すのだ。心臓が早くなるのは、しかし苛立ちの為ではなかった。
 胸の奥が痛んで、指先から血の気が失せる。
「失礼な話だよ、自分から近付いてきてさ」
 真田の驚きに、幸村は気付かないのか気にならないのか、一方的に話し続けている。いや気付かない筈がない。幸村に限ってそんなわけがなかった。
 肩に腕をまわし、幸村は一度伺うように真田を見ていた。見詰めて、けれどなにも言わずにその首の後ろに手をやり引き寄せる。
「本当、酷い目にあった」
 するのだとすぐに分かった。こういう場面で、幸村は躊躇ったりということをしたことがない。
 ジーンズの前が緩められて、下着の間から取り出されたものが真田の唇に押し当てられる。鼻先をくすぐる匂いは、決して気分のいいものではない。不快とも言えた。それなのに喉が鳴り口の中に唾液が溢れてくる。
 触れられてもいない、すこし前まではその兆しさえ見えなかった自分自身に、熱が集まってくるのを真田は感じた。俯せになっていなければきっと幸村にも気付かれていただろう。
 恥ずかしくて、頬が赤く染まるのが分かった。唇を噛み締めるより先に、幸村の先端が唇を割って入ってくる。舌の上に苦い味覚が広がる。幸村のものだと思うと、その味さえ甘く変わるから不思議だった。
 なのに相変わらず、彼の言葉は真田の耳に辛い音しか聞かせてくれない。
「顔は可愛かったのにさ。真田に、見せたことあったけ? けっこう、胸もでかくて。
 それに上手かったし」
 喉奥に当たる幸村の苦い味覚と息苦しさで、その声を誤魔化そうとするが無理だった。
 濁ることも途切れることもなく幸村の声は落ちてきて真田の耳を打つ。逆にそこから逃げようと首を動かそうとしても、頭の後ろへまわされた幸村の手に阻まれて叶わなかった。
 真田に比べて余程繊細な指をしているくせに、幸村の腕の力は恐ろしく強かった。すこしも逃げることを許さず、更に奥へと飲み込ませようとする。
 太いものが口の中を塞いで、息ができない。歯を立てないようにとそればかり思う真田の頭上から、わずかに熱の篭もった幸村の声が降ってくる。
「…っ、へたくそめ」
 後頭部を掴まれ引きずられるようにして、喉奥まであったものが引き抜かれていく。大きく喉を喘がせる暇もなく、肩を押され俯せに倒される。
 潤ってもいない場所に押し当てられて、真田はきつく唇を噛んだ。
「ああそうだ」
 中へと入ってくる直前、幸村が動きを止めた。床に放り出されていた上着のポケットから財布を取り出す。
「今日はするつもりだったから、持ってるんだよ」
 誰をと言わなかったけれど、その相手が自分でないことくらい真田には分かっていた。見たこともない女性の姿が、かたく閉じた瞼の裏でちらつく。
 薄い膜をつけて真田の中へと入ってきたあとも、幸村は喋り続けていた。
「俺は酷い男なんだって、言われたよ」「支配されて、自由がないってさ」「失礼な話だよ」「そんなつもり、俺には全然ないのに」
 幸村が饒舌になるのは珍しいことだった。行為に関わりのないことを言うのはもっと珍しい。それだけ傷付いていると言うことなのだろうか。
 聞かされる度、幸村と関係が会った女性について語られる度真田は唇を噛んだ。聞きたくなかった。そんな話をして欲しくない、言わないで欲しい。
 もっと言えば、自分以外の誰かとこんなことをするのはやめてほしかった。自分を選んでほしかった、自分だけを。
「う、あっ、ゆき…っ」
 そうと口にできたら、どれだけ楽だろう。
 真田にできるのは、せいぜい幸村の名前を呼ぶだけだった。やめてほしいと言えば、幸村は真田から手を離すだろう。その為だけに幸村はここに来たのだ。
「ほんと…っ、真田は変わってるよな…!」
 熱く変わった息を吐き出しながら、幸村が呻くように言う。
 またすこし中にある幸村が膨らんだ気がした。
「ヤってる最中、女の話されるのが、好きなんてさ…っ」
「く、あっ、なん…っ」
「だってお前の中、締め付けてきてすごい気持ちいい…!」
「ひ、っ!」
 耳元で聞き慣れない女の名前を囁かれる。知らない名前だ。見たこともない名前。会ったこともない女の気配が真田の肌を震わせて、きつく幸村を締め付けた。
「い…いいな、さなだ…っ」
「ひ、あ! ゆき…っ」
 吐き出した瞬間、きつく狭まった内側で幸村の熱が弾けるのが分かった。
 薄い膜を挟んでいる所為で、その熱はいつもより真田を悩ませることが少なかった。





テニスやってなさそうな人達……

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