忍者ブログ
生温い話ばかりです…
2024.05.06,Mon
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

2012.11.08,Thu


 幸村がもういいと言うと、真田の上に覆い被さっていた重みが突然消えた。目を向ければ遠ざかっていく背中も見えたはずだ。
 涙と汗と涎でぐちゃぐちゃに汚れた顔の前で腕を交差させている真田はそれを見なかった。見たくなかったし見るつもりもなかった。
「ゆきむら…ゆきむら」
 小さな声で繰り返しながら、真田は幸村が言った言葉を考えていた。幸村の両手はまだ真田に触れている。両側から耳を隠すように置かれた掌は、何度も真田を撫でてくれていた。
 輪郭を辿るように上下する指先の感覚は、真田の上にいた男が寄越してくる熱よりずっと曖昧だ。それをなくしてしまわないよう真田はいつもしがみつくようにしてその感覚を追っていた。他の人間が入ってきて中へ吐き出していってもだ。
 終わる頃には真田も意識を保つのが難しくなるから、幸村がいついなくなっているのかは分からなかった。本当はずっと、頭を撫でてほしい。いや自分に触れるのは幸村だけがよかった。
 最初に真田に熱を教えたのは幸村だ。これは幸村とだけするものと、真田はずっとそう思っていた。だから、そう言った。そうだったらいいと願った。
「いいよ、叶えてあげるよ」
 実際どんな言葉を口にしたのか真田は憶えていない。嫌で嫌で仕方なくて泣き喚いて、その中で口走った言葉はどれも断片的だった。それを幸村は拾い上げてくれたのか。
 頷きそして小さく手を幸村が振っただけで、真田の上から男は消えた。大きく前をはだけられ剥き出しの肌が、寒さに大きく震える。
 せめて前を閉じようと手をやろうとしたときに、幸村が下りてきた。胸の中央、小さくくぼんだ場所に口付けられて真田は跳ね起きようとした。
 先刻まで誰とも知れない男が触れていた体だ、汚いだろう。幸村が触れていいものではない。
「動くな」
「しかし…」
「俺が決めることだよ。お前の意見なんか聞いちゃいないよ」
 切り捨てるような幸村の物言いも、真田には甘いだけだった。胸の下へ吸い付き小さく噛みついてから、幸村はゆるゆると下へと降りていった。
 腹を舐め臍へ舌を突っ込んでくすぐり、下腹の手前で顔を上げる。同じことをした者もいたし、先刻まですぐ近くをなぞっていた指もあった。けれど幸村の舌には遠く及ばない。真田は何度も声を上げ手足を張りつめた。
 両腕で視界を塞いでいたのは、いつの間にか喉を喘がせ上げる声をどうにか隠すために変わっている。隠せるものでもなかったが、幸村に聞かせるにはあまりに情けない声だ。
「見ておいで、真田」
 腹の下、下生えのすぐ上で幸村がそういう。腕を持ち上げにじむ視界を、言われた通り真田はどうにか向けた。
 ぐいと辛うじて腰に止まっていた袴が引きずり下ろされ、赤黒く腫れ上がった真田自身がさらけ出される。
「ひっ」
「ああ、もう限界かい?」
 幸村は小さく笑ったような気がした。ぼやけた視界の中で幸村の姿はまるで白い光で、柔らかそうな唇もまるい額もよく分からない。赤い花が咲いたと思ったのは一瞬だった。
「は、ぁあっ!」
「…早いよ、真田」
 ちゅと音を立てて幸村がその先端を口に含んだ。小さく歯が辺り一度吸い上げられて、それが真田の限界だった。
 吐精の快感が冷めると同時に、幸村の口の中へ吐き出してしまった罪悪感が胸を責める。どろりとした熱を口に含めたまま幸村が真田を根本まで口に含む。水音が上がって、罪悪感ごと真田を熱が飲み込む。
「や、ゆきむら、ぃやだあ…っぁ」
「こっちを見るんだ、真田」
「は…!」
 眉を寄せ真田は命じられるまま、逃げ出しかけた視線を幸村へ戻す。真田を含んだ赤い唇の端に、白い汚れがのぞいていた。
 自分の吐き出した熱だと気付いた途端、真田は声を上げ泣き出していた。
「ひ、ゃ、ぃやだあ」
 熱に浮かされ上げる声となにも変わらない。ぞろりと裏側をなぞった赤い舌が強烈な感触を残していくのを、目を逸らせずに真田は見詰めた。
 すぐに膨らみはじめた真田自身を伝って、幸村の形のいい口元から白い精液が流れ出て後ろまで濡らす。冷えていく感触だけが不快で、あとはもう熱しかなかった。見下ろす視界の中でこちらへ向けられる幸村の瞳まで含めて、熱くてたまらない。
 後ろにこぼれた幸村の唾液と真田のものが混じったぬるみを利用し、幸村が中へと指を差し入れてくる。客がいなくても毎日真田自身の手で開いているそこは、幸村の細い指ならあっさりと飲み込んでしまう。
 奥で曲げられ押し上げられると、爪先まで震えが走った。
「っあ、そこは、い…っ」
 鉤状に曲げたまま幸村がぐるりと指を動かす。瞼の裏にちかちかと白い光がまたたき息をするのも辛かった。同時にきつく吸い上げられ先端を尖らせた舌で突かれて、真田は幸村の口の中でまた熱を吐いた。
 飲み込むことはせず、どろりとまだ熱いままの精液を幸村が口から溢れさせる。奥をいじる指が二本に増えて、粘ついた水音が更に大きくなった。
 拡げられたままぐるりと中で動かされると、熱を吐いたばかりのそこがまたふくらみはじめる。荒く息をつき真田が目を閉じると、足の付け根に顔を埋めたまま幸村が喋る。
「こっちを見るんだ、真田」
 くぐもりすこしだけ聞きにくい幸村の声の理由が分かるだけに、真田は追いつめられた。許してくれと口走ればなにをと幸村が穏やかな声で問いかけ返してくる。
「や、やめてくれ…」
「お前は俺に抱かれたいんだろう? いくらでもしてやるよ、逃がしはしないよ」
「ひぃ、ああっ」
 幸村の指が三本に増える。指はそれぞれがばらばらに動き、真田の中を拡げ押し上げかき混ぜる。くびれを幸村の舌がなぞり根本まで咥え込んで吸い上げる。
 そんな風に追いつめられれば、またすぐ熱を吐き出す手前まで真田は連れて行かれてしまった。これ以上幸村の口の中に熱を吐くような真似をしたくない。
「ゆき、や、ゆきむら…ぁっ」
「ほらまた。目をそらすな、何度言ったら分かるんだい。
 俺の言うことを聞くんだよ、真田」
 言いながら幸村の舌が絡みつく。熱を煽るだけの強烈な感覚に真田が抵抗できるものなどなにもなかった。
 白く焼き付いたような感覚が最後で、詰めた息を解いたときにはもう終わったのだと分かった。今度も幸村の口の中に吐き出してしまっていた。
「ぅ、うう…っふ」
 声を上げて泣き出した真田にも、幸村は手を止めてはくれなかった。真田の吐き出した熱をその輪郭へ塗りつけるように舌を動かし、根元まで下りていけば二つを口に含み転がしてみせた。
 そんなことをした者は今までいなかったし、以前に幸村だってしたことはなかった。与えられるばかりの快感の強さに真田はただ喘がされた。幸村はまるで容赦がない。
 繰り返しやってくる高い熱に、真田は息をすることさえ辛くさせられた。見ろと言われても、幸村がどこにいるのか分からない。
「さなだ」
「は、っあ! ゆき」
「お前は、俺のものだろう?」
 忘れたことは一度だってない。真田は幸村のものだ。どうにか首を振ったが大きな震えが何度も走るのに紛れてしまって、幸村には分かっただろうか。
「そう、いいこだね真田。お前を手放したりしやしないよ」
 ぐと熱が押し当てられ、身構える隙も与えず幸村が中へ入ってくる。さんざんにいじられ拡げられたそこは、幸村の大きさをどうにか飲み込んだ。
 その形を真田の体は覚えていた。どれほどのものを与えてくれるのか覚えていて、その期待に喉が鳴る。
「ああいやらしい顔だね、さなだ」
「は、っひ、あ、ゃあああ」
「お前にはいっとう、その顔が似合うよ」
 背を丸め、幸村が顔を近づけてきて笑う。白い汚れのこびりついた幸村の顔は美しく恐ろしく、いやらしかった。
 背が粟立ち中へで入ってきた幸村をきつく締め付ける。ちいさく眉を寄せ、幸村がほと息を吐くのが分かった。熱い息が肌にかかるのもたまらない。
 自分の中で幸村が快くなっている。その証拠に真田の内側で、幸村が更に大きさを増していた。これ以上はないほど拡げられている場所が更に押し上げられて、真田は声を上げるしかない。
「ひっ、くぅ、あ! ゆき、あ」
「ぁああ、いいこだ、さなだ」
 幸村が背を曲げ手を伸ばしてきて、真田の額を撫でる。汗でひたりと張り付く幸村の掌が滑らかでここちのいい冷たさで、真田は目を細めてその淡い感覚を追った。
 他の男が自分の上にいるとき撫でてくれた幸村の手と同じだ。いつも感じていたそれよりすこしだけ熱が高い。その意味するところを真田は分かっていた。
「あぐ、や、まだ」
「なにを言ってるの? 忘れたわけじゃぁないだろう?」
「あ、ああ! きつっ、ふかい…っ」
 着崩れた袴ごと真田の脚を抱え上げると、幸村ははじめから深くまで突き上げを寄越してきた。忘れたことはない、幸村のやり方だ。真田を待つことを幸村はしてくれない。
 掴み引き寄せて幸村の思う通りに真田はかき混ぜられる。どんなにしても真田が逃げることだけは幸村は許さなかった。喉をそらし反射的に跳ねた体を押さえつけて、幸村は同じ場所を何度も突き上げた。
「かは、ぁああああ…っ」
「ここがいいんだろう、お前はここが好きだね」
「ぅんあ!」
 幸村が言うのならそうなのだろう。突かれ拡げられなぞられ押し上げられるどこもかしこ真田にはよくてたまらないのだ。
 幸村がするひとつひとつが真田を追いつめ高い場所へ連れて行かれる。中へ吐き出されたとき大きく真田は体を震わせたけれど、そこから下ろしてもらえない真田が熱を吐くことはもうなかった。
「ひ、はっ、も…っ」
「下りてこれないならずっとそこにおいで」
「やぁあ、っん」
 優しい声で幸村がいい、ぐるりと中に埋めたままのものを回す。わずかに力を失った幸村と真田の間から流れ落ちていくもののせいで、いやらしい音が上がった。
 真田が望んだ通りの場所へ、幸村は連れてきてくれた。どんな願いも、幸村は叶えてくれるのだ。



先日発行した「行きはよいよいかえりは怖い」の後日談というかなんというか。読んでないとよく分からない話ですね。

拍手[3回]

PR
About
HN; k
Link(無断多数
カウンター

30000hitover thanks!
Template by mavericyard*
Powered by "Samurai Factory"
忍者ブログ [PR]