忍者ブログ
生温い話ばかりです…
2024.05.06,Mon
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

2009.04.19,Sun

 真ん中に置かれたパウンドケーキは幸村の家で作ったものだそうだ。ハーブとブルーベリーは幸村が育てたものだという。
 それらの大方はまるで吸い込まれるように丸井の口の中に入っていった。
 同じ部屋の中にいる者達もそれぞれ一切れづつは手にしているが、到底そのスピードに敵うはずもない。
 どんどん消えていく様子を黙って見ているよりなかった。
「はいお茶」
「ん、サンキュ幸村くん」
 丸井が受け取ったお茶も、摘み取ったハーブを混ぜた紅茶だという。春めいた花の香りが部室の中に広がる。いつもは埃と汗の匂いばかりの部屋がまるで別世界に変わったように思えた。
 部室に置かれた会議用の机を挟んで向かい合って腰を下ろしている二人の会話で、既に遠くに連れ去られているのだけれど。
 まるで年頃の少女のように止めどなく、幸村と丸井は先刻からずっと喋り続けていた。その片手間にケーキを食べ紅茶を飲むのだ。全く驚異的なスピードだった。

「真田ってさ、あんな顔してるのにけっこうロマンティックな台詞吐いたりするんだよ。想像できる丸井? 真田がさ、目潤まして頬染めてお前がきれいすぎて花を見るのを忘れていたとかいうんだよ!」
「わーキモー。どの顔でそんなこと言うんだろうね! 真田のくせに! ジャッカルなんてその点恥ずかしがり屋なもんだからさ、なかなか俺の顔なんて真っ直ぐ見てくれないんだよねー。こっちは折角ムード満点にしてばっちこいなのにさ! カラオケする為だけにラブホ入る馬鹿がどこにいるってんだよねー」
「ハゲのくせにね。で、どうだった? 下もハゲてた? まだだった? 真田なんかぼーぼーだよ? 今度ちょっと剃ってみようかと思うんだけどね」
「ジャッカルはハゲじゃないから! あれは剃ってるんだってば! 将来はげたって剃ってるんですって通用できるんだから最高じゃん。それより真田ぼーぼーなの? わかりやっすい」
「うん。ヘソまで繋がると思ういつか」
「わーキモ! 幸村くん趣味悪いよ!!」
「どっちが。俺はハゲ属性ないし」
「だからジャッカルはハゲじゃないから! 南米出身だよハーフだよモデルなみじゃん身長もスリーサイズも! あっちだっておっきいし絶倫だよ!」
「無用の長物じゃない、まさに」
「まあそうなんだけどねー。使うあてないよね」
「真田はけっこうお手頃サイズだから、身の丈合って丁度いい感じだよ」

「…お前ら」

 花のような声で恐ろしく下品な会話を交わしている二人のあいだに、はじめて別の声が落ちる。
 半分ほど食べかけのケーキが手の中で小さく震えているのが見えた。その肩越し、柳の向こうの壁際に寄せられたベンチに腰掛けている三人の人影がある。
 先日幸村と花見に行ったらしい真田は、項垂れた顔ばかりではなく耳や首筋まで赤く染めている。顔色の違いが分かりにくいジャッカルも、同じように項垂れたままぴくりとも動かない。
 二人からすこし離れたベンチの隅に辛うじて腰掛けている赤也は、青ざめこちらとあちらを交互に目を向けていた。
 どの手が掴んでいるケーキも一口しか食べられていない。
「…お前らそう言う話は、本人がいないところでやってやれ」
 ため息混じりに柳がそう言った。こんな状況で口に運んだケーキの味が分かる筈もない。
 内容については問わない。夫婦喧嘩は犬も食わないと言うだろう。蓼食う虫も好き好き。他人の主義嗜好はとやかく言わない主義だった。
 大概に趣味が悪いと思うが。桑原にしろ真田にしろ。



攻めさんがギャルギャルしいの仕様です
当ブログは幸真メイン・ブンジャ推奨になっています
柳さんは色々面倒なので、赤也がまっすぐに育ってくれることだけを祈っています

拍手[4回]

PR
About
HN; k
Link(無断多数
カウンター

30000hitover thanks!
Template by mavericyard*
Powered by "Samurai Factory"
忍者ブログ [PR]